鉱物油は安価・汎用性の高さで悔やまれない存在であり、化学合成油はある性能に特化すれば絶対に負けないという設計はできるものの高価・汎用度では鉱物油負ける。 化学合成油は鉱物油より何が優れているか。汎用性な性能ではなく、オイルの個性として特徴的な性能にクローズアップする場合に特色を出しやすい。「高回転域でシャープな伸びきりを求めたい」、あるいは「真夏の低速クローズドコースで連続して300馬力の負荷をかけるような走りで強靭な油膜を維持したい」といった場合、0W40などレスポンスに秀でた特性や、20W60、5W50といった超後負荷にも根を上げない油膜保持性は粘度指数が大きい化学合成オイルでこそ実現できる+αの性能です。 ところが、これらは一般ユーザーにはまず想定されないシチュエーションであるが、1回の走行が10分程度、距離にして数kmといったようなシビアなシチュエーションの場合でも化学合成油は効く。このようなチョイ乗りはエンジン内で結露しやすく、エンジンオイル内に取り込まれた水分やブローバイのガソリンが熱によって蒸散・放出されにくい。 ところが、化学合成油は設計の自由度によってガソリンや水分を抱き込みにくいベースオイルを作り出すことが可能なので、エンジンオイルの劣化を若干だが緩和することも可能。そして0W20といった低粘度オイル指定のクルマにとっても強い味方になる。化学合成油で秀でているのは油膜の厚さではなく油膜保持性。油膜の厚みは粘度によってほぼ決まるので粘度こそもっとも重要。 油膜保持性とは、温度上昇によって粘度が落ちる=油膜が薄くなるのを抑制する働きのことであり、これこそが粘度指数の大きさである。つまり温度が上がって大幅に粘度が定価することを避けたい、粘度マージンが少ない低粘度オイル推奨エンジンには化学合成油が好ましい。粘度=油膜の厚み。粘度指数は=温度による粘度変化率。エンジンを保護するのはあくまでも油膜。この能力は鉱物油であっても化学合成油にまったく劣らない。(ベースオイルによって油膜の強さに若干の差があることは事実だが・・・)。 一方、高温になっても粘度を維持するのは粘度指数の大きさ。一般に粘度指数が大きい化学合成油は粘度低下が抑えられるので高性能をいわれる。鉱物油はベースオイルの製法がほぼ定まっているため品質が安定しているのが特徴。 エンジンオイルはどうやって生まれたのだろう? その昔、原油からガスや燃料となる灯油などが取れることはすでに発見され、それらは燃料として重宝されたものの、残油となるオイルは単なるゴミ、それも始末に困る厄介なゴミであった。ところがその後、この残油を精製すれば、機械の潤滑剤として十分役に立つことがわかってきたのである。
|